荒船山 〜千年の祈りと断崖の聖地〜

群馬と長野の県境にそびえる荒船山。 その姿は巨大軍艦のようで、古くから人々に畏れ敬われてきました。
切り立つ「艫岩」に立つと、眼下には雄大な景色が広がり、天地がひとつに溶け合うような感覚に包まれます。しかし同時に、転落の危険もある厳しい場所。だからこそ、山そのものが修行の場であり、祈りの対象でもあったのでしょう。

山麓に佇む「荒船不動尊(出世不動尊)」は、この山を象徴する祈りの拠点です。伝承によれば、武田信玄が弘法大師作と伝わる不動尊をこの地に遷したことが始まりとされます。千年を超える信仰の場として、人々の願いと修行者の祈りを受け止めてきました。
不動尊のお堂は、登山口のすぐそばにあり、私もここで手を合わせてから山に入ります。祈りを捧げると、不思議と心が整い、足取りが軽くなるのです。登拝の道を進むと、途中で苔むした岩や静かな沢が現れ、自然そのものが道場であることを感じさせてくれます。やがて経塚山へと至り、そこで得られる感覚は「浄化」そのもの。荒船山と荒船不動尊。そこには千年の祈りが重なり、今を生きる私たちに「心を磨く」という大切なことを教えてくれます。
修行の山は厳しくも優しく、その地に立てるご縁に深く感謝しています。