「非必須」だから、摂らなくていい?

運動する人に知ってほしい「グルタミン」の話

「グルタミンって必要なんですか?」

スポーツや栄養の世界にいると、時々聞かれる質問です。

グルタミンはアミノ酸の一つです。

栄養学上は「非必須アミノ酸」に分類されています。

ここで、まず知っていただきたいことがあります。

「非必須」という言葉は、「摂らなくてもいい」という意味ではありません。

必須アミノ酸は、体内で十分につくることができないため食事から摂る必要があるもの。

一方、非必須アミノ酸は、体内でもつくることができるアミノ酸です。

必要ないのではなく、身体が自分でつくることができる。

という意味です。

そしてグルタミンは少し特殊です。

通常であれば身体の中でつくることができますが、激しい運動や大きな身体的ストレスなど、身体の要求量が増える状況では、体内でつくられる量だけでは追いつかなくなる可能性があります。

このためグルタミンは「条件付き必須アミノ酸」と表現されることがあります。


なぜスポーツ選手とグルタミンなのか

著者は長く水泳や運動指導の現場にいますが、

・「追い込んだ練習を続けると風邪をひきやすくなる」
・「合宿後に体調を崩す」
   という経験をした選手や指導者は少なくないと思います。

実際、長時間の激しい運動後には血中グルタミン濃度が低下することが報告されています。マラソン後に約20%低下した研究もあります。

ここで重要なのが「免疫」です。

グルタミンは、リンパ球などの免疫に関わる細胞や、
腸管の細胞が利用する重要なエネルギー源の一つです。

そのため

運動量が増える

身体の代謝需要が増える

グルタミンの利用量も増える

という考え方には生理学的な根拠があります。

ただ、
「グルタミンを飲めば風邪をひかなくなる」
        という単純な話ではありません。

激しい運動後のグルタミン補給を調べた研究では、感染症状が少なかったという報告がある一方、運動後の免疫機能低下そのものを明確に防げなかった研究もあります。

そのため僕の回答は、
グルタミンは薬ではありません。
・一方、身体を酷使する人が知っておく価値のある栄養素です。

と伝えています。


もう一つ注目したいのが「腸」

僕がグルタミンを評価しているもう一つの理由が腸です。

食べたものを消化し、吸収し、身体の材料に変えていく。

その吸収の入口となる腸が整っていなければ、どれほど良いものを食べても身体づくりは始まりません。

グルタミンは腸管細胞でも利用されます。

特に激しい運動や暑熱環境では腸管バリア機能が乱れることがありますが、ランニング前のグルタミン摂取によって、運動後の腸管透過性の指標が抑えられた研究もあります。

難しいのは、すべての研究で同じ効果が出ているわけではありません。

ここも重要です。

栄養は、
「これを飲めば(摂れば)全部解決する」
    ではないのです。


「まずタンパク質」を大切にしたい

では成長期の子どもはどうでしょう。

僕はここを特に保護者の皆様に知っていただきたいと思っています。

成長期だからといって、健康な子ども全員にグルタミンサプリメントが必要だとする十分な根拠はありません。

乳幼児や病気・強い代謝ストレス下など、特別な状況ではグルタミンの必要性が高まる研究がありますが、それを健康なすべての子どもにそのまま当てはめることはできません。実際、早産児などを対象とした大規模試験でも、一律の補給による明確な利益は確認されていません。

ですから、僕が最初に見るのはサプリメントではありません。

まず食事です。
そしてタンパク質です。

肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、タンパク質を含む食事にはさまざまなアミノ酸が含まれています。食品中のグルタミン量もタンパク質食品によって異なります。

グルタミンだけを考える前に、

「そもそも身体をつくる材料が入っているだろうか?」

を考えてほしいのです。

身体はアミノ酸同士を代謝しながら、必要な物質をつくっています。

このような事からも
タンパク質という土台を飛ばして、グルタミンだけを語らない。

これは僕が栄養を考える上で大切にしている考え方です。


「グルタミン=成長ホルモン」は少し慎重に

グルタミンと成長ホルモンについても研究があります。

1995年には、健康な成人9名に2gのグルタミンを摂取させたところ、血中の成長ホルモン濃度が一時的に上昇したという研究が報告されています。

これは興味深い研究です。

ただ、
「グルタミンを摂れば子どもの成長ホルモンが増えて、身長が伸びる」

というところまで科学的に証明されたわけではありません。

成長期の子どもにとって、

  • 運動すること
  • よく食べること
  • よく眠ること
  • 十分なタンパク質を摂ること

この基本を整えることの方がはるかに重要だと考えています。

その上でグルタミンというアミノ酸の働きを知る。

この順番です。


B群も忘れない

もう一つ栄養指導で大切にしているのが、
「一つの栄養素だけを見ない」ということです。

例えばビタミンB6は、100を超える酵素反応に関わり、その多くがタンパク質やアミノ酸の代謝に関係しています。

「グルタミンを吸収するためにはビタミンB群が絶対必要」

という言い方は正確ではありません。

より正確に言えば、

摂ったタンパク質やアミノ酸を身体の中で利用していく代謝全体に、ビタミンB群などの微量栄養素が関わっている。

ということです。

だから、

プロテインだけ。

グルタミンだけ。

ビタミンだけ。

ではありません。

身体はすべてつながっています。


僕の推奨するグルタミン

著者は、運動量の多い人にとってグルタミンは「知っておいてほしいアミノ酸」の一つだと考えています。

特に、

  • 激しいトレーニングを繰り返す人。
  • 長時間運動する人。
  • 十分な回復時間が取れていない人。
  • 仕事と運動の両方で身体を酷使している人。

こうした人ほど、

「何を足すか」の前に、

  • 睡眠は足りているか。
  • エネルギーは足りているか。
  • タンパク質は足りているか。
  • ビタミン・ミネラルは足りているか。

を確認する。

その土台を整えた上で、グルタミン補給を一つの選択肢として考える。

この順番をおすすめします。

子どもについても同じです。

サプリメントありきではありません。

身体をつくる食事があり、
運動があり、
睡眠があり、
心の状態がある。

その上に栄養学があります。


身体は、一つの栄養素ではできていない

「○○を飲めば健康になる」

人間の身体は、そんなに単純ではありません。

タンパク質が分解され、
アミノ酸となり、
さまざまな場所へ運ばれ、
必要なものへと姿を変えていく。

腸も、免疫も、筋肉も、それぞれ別々に存在しているのではなく、すべてつながっています。

結論的なまとめとなりますが、僕の伝えている3栄養素は

  • 体に栄養を。
  • 頭に知識を。
  • 心に良い言葉を。

と考えます。

グルタミンも、その大きな循環の中にある一つの栄養素です。

「非必須」という文字だけを見て、

「必要ないもの」

と思わないでください。

身体は、自分でつくれるものまで毎日つくって、私たちを生かしてくれています。

その身体に感謝しながら、

必要な材料をきちんと届けてあげる。

それが栄養の基本なのだと思います。


※本稿は一般的な栄養情報と運動指導現場での経験をまとめたもので、疾病の治療や個別のサプリメント摂取を指示するものではありません。特に成長期のお子様への継続的なサプリメント使用については、食事状況や健康状態を踏まえて医師・管理栄養士等へご相談ください。